人に生まれると、必ず訪れるのは、『死』
昔から『門松は、三途の川の、一里塚』(若い人は、知らないか(;^ω^))
と、言われるように、年を重ねるごとに、その時が、
近づいていて、来ることは、間違いのない事・・・
びっくりしましたが、でも、静かで、安らかでした。
『少し、息が苦しいです』
その方は、90才近い、Dさん(女性)
高齢による、心機能・腎機能低下で、入院されていたと、
記憶しています。
高齢では、ありましたが、しっかりと自分で、トイレにも行き、
食事も何とか食べられている方でした。
序章
コールがあったのは、準夜だったと思います。
Dさんは、時々、呼吸苦を、訴えることがあって、
ネブライザー(気管を拡張させる、水蒸気)を、することが、
ありました。
そんなに頻繁では、ありませんでしたが、少しづつ回数が、
増えてきた時期でした。
本編
コールが、あって、お部屋に行くと、『少し息が苦しい』と、Dさん。
バイタルを、測りましたが、特に異常は無し。
呼吸も、ゼイゼイと、言っている感じもありませんでしたが、
きつそうに、されていました。
私『ネブライザーしましょうか?』
Dさん『そうね。お願いします』
すぐに、いつものネブライザーを、準備して、Dさんの所へ。
私『10分くらいしましょうね』
Dさん『そうね。すいません。』
ネブライザーのスイッチを入れて、『何かあったら、呼んでくださいね』
と、私。
そして、その場を、離れました。
他の仕事を、片付けながら、約10分後、Dさんの所へ。
Dさんに、声をかけました。
『どうですか?少し良くなりました?』
・・・・・・・・・お返事はありませんでした。
よく、Dさんを見ると、呼吸はされていませんでした。
静かに、目を閉じて、眠っているようなお顔。
私は、急な展開すぎて、パニック!
転げるように、当直医へ、電話したことを覚えています。
『ネブライザーの薬間違えた???』イヤイヤ、いつものやつ。
病棟には、1種類の製剤された、薬液しかありませんでした。
間違ってないけど。なんで?どうして?
きっと、当直医に、電話していた時も、ものすごく慌てていたのだと思います。
結論
私は、慌てて、パニックになりながら、当直医へ、電話。
夜勤の相方は、酸素吸入や、心臓マッサージを、してくれていました。
当直医は、報告を聞いてくれて、すぐに来てくれました。
部屋で、バタバタしている、私たちに、『お部屋を、変えよう』と、医師。
そりゃそうです。Dさんは、4人部屋にいて、他にも患者さんがいました。
すぐに、医師の指示通り、ステーションに近い、回復室へ移動。
医師『家族には連絡した?』
私たち『あっ、まだできてません。すいません。』急すぎて、慌てていたため、連絡が、
出来ていませんでした。
医師『そう、じゃあ、電話して。最後に見た状態と、バイタル教えて』
私『はい』
医師『僕が、説明するから。』と。
『90才でしょ。苦しい処置をするのには、もうきつい年齢だよ』
『静かに、送ってあげることも、必要だよね。』と。
救命処置は、行わず、家族へ医師は、電話で状況を説明してくれました。
医療関係に、努めている人なら、分かると思います。
挿管をして、呼吸器に繋がれることが、どれだけ苦しいか・・
意識が、全くないならば、苦しみは分からないかもしれませんが、
少しでも、意識があれば、痰をとられるたびに、苦しくて、
涙を流す。
器械と、呼吸が合わなければ、苦しくて、せき込む。
たくさんの、チューブに繋がれて、そのチューブを抜く恐れのある人は、
抑制をされる。
自分で、向きを変えることも出来ない・・・
救命処置は、そんな苦しい事を堪えないといけないという、処置です。
まだ、若くて、治療すれば、元気になれる方であれば、堪えることも意味が、
大きくあると思います。
でも、Dさんは、90才。体も小さな、おばあさんでした。
心臓マッサージで、肋骨が、折れてもおかしくないほど、やせ型体系の。
余談ですが、本当に救命処置が必要な時には、心臓マッサージを、
ガンガン行います。
肋骨を、折る事は、決して珍しい事ではありません。
私も、経験したことがあります。
肋骨骨折よりも、心拍再開を優先します。
心臓が、止まってしまえば、そこで終わりですが、心臓が動けば、
肋骨骨折は、治せるからです。もちろん、骨折の痛みは、
患者さん本人は、堪えないといけませんが・・・
90才の、高齢者に、奇襲的な処置をして、一時的に延命できても、
その先、どのような状態が待っているのか、この時の私は、
若く経験もありませんでしたので、よく理解できていませんでした。
とにかく、助ける事が、正義であると。
でも、当直医師は、たくさん見てきたのだと、思います。
今の、私も、同じ思いです。
人生の最後は、穏やかなものであってほしいと、思っています。
医師は、家族に説明するときも、私たちに説明するときも、静かに、分かりやすく、
話をしてくれました。
Dさんは、本当に、眠っているようでした。
家族に説明し、家族と、一緒に静かに、帰られました。
最後に家族に立ち会ってもらえなかった事は、すごく心残りでは
ありましたが、ご家族も、納得されていました。
看護師をしていると、色々な事例に、当たります。
急性期病棟・慢性期病棟で、かなりの差はあります。
どれが、正解で、不正解なのかは、今でも、私には分かりませんが、
願わくば、患者さん本人が、痛み無く安らかであってほしいと、
思っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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