グレーなナースの日常 

看護

何十年も、寝たきりの○○さん。ただ、横になって話もできない。
声をかけても、目は合わないし、感情もくみ取れない。
哀しいドラマのような、家族の状態。
彼女は、何を感じ・思いながら毎日を過ごしているのか?
考えても考えても、良く分からない・・・
私たちにできることは、毎日オムツを替えて、胃瘻から食事を流し、お風呂に入れて、声をかけるだけ・・

出産時の、脳出血が原因で、

○○さんには、息子さんが一人いる。
出産時に、脳出血を起こして、障害を負ったそう。
当時の、記録は残っていないから、詳しくは分からないけど・・
最初は、少しは動けたらしい。
きっと、一生懸命に、育児をしようとしていたのかな?
でも、障害は良くなることはなく、悪くなるばかりだったそう。

ご主人が、子育て

子供さんは、旦那さんが、メインで育児。
大変だったことは、容易に想像できます。
○○さんは、少しずつからの自由が利かなくなってきて、寝たきりに。
ものすごく、大変だった事と思います。

疲れて、自分から悲しい選択

息子さんが、大きくなったころ、○○さんのご主人は、介護疲れで、命を絶ったそう。
本人も、辛かっただろうけど、残された息子さんは、どんな気持ちだったのだろう?

考えて、想像すると、恐ろしいほどの辛さと、悲しさは、想像できる。

息子さんは、きちんとお母さんを面倒見ている

○○さんが、うちの病院に来て25年以上経つ。
ご主人が、亡くなってから、支払い・洗濯・日用品の準備・補充は、ずっと息子さんがしている。
入院が長くなると、家族の足が遠のくことは、よくある事。
なかなか、洗濯物を取りに来てくれないとか、必要物品の補充とか。
やっぱり、お金がかかるから、物を買ってきてくれない家族も多い。
でも、○○さんの息子さんは、お風呂の次の日には、必ず洗濯物を、取りに来て、補充してくれる。
必要なものがある時は、すぐに買ってきてくれる。
今までも、これからも。
でも、息子さんもう50才。自分の健康も気になる年頃。
きっと、お父さんに、頼まれたのだと思う。
「お母さんを頼むと」
いつも、言葉少なく「よろしくお願いします」と、言って帰る息子さん。
彼は、独身で生活している。

主治医が、言っていた言葉

○○さんの、主治医が、回診のたびに言っていた。

「○○さんの人生は、辛いよね。」と。
確かに、○○さんは、体は生きているけど、心はどうなんだろうと。
家族は、幸せに生きていけているのだろうか?

緊急時に、命を助けるために必死に処置を行うけど、その後の人生の事は考えていない。
とりあえず、助ける。それが、私たち医療者の仕事だけど、慢性期病棟で、現実を見ると、考えることが、たくさんある気がする。
体だけ、助けるのはどうなんだろう。
寝たきりで、自由のない患者さんを見るたびに、考える。

心が、グレーに傾くこともある。





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